名古屋の秋

秋になれば名古屋市は街全体が芸術の秋に染まります。

名古屋セントラルパークの紅葉

厳しい猛暑と台風が過ぎれば名古屋市にも芸術の秋が訪れます。 秋といえば食欲の秋という人もいますが、食べ物ばかりを追いかける食いしん坊も 秋くらいは芸術に興味を持ってみてはいかがでしょうか。 そんなに大げさに考えず、気軽に身近に芸術を楽しむことが出来るのも名古屋市の 良いところなのです。 なにも何日もかけてエジプトへ行ってピラミッドやスフィンクスを直接見ようとか、 飛行機に乗ってアメリカへ行きニューヨーク近代美術館(MoMA)を隅々まで歩き 回ろう、という規模の芸術の秋を提案しているわけはありません。 市内ならば地下鉄に乗るだけで芸術に触れることができます。 涼しい秋風が吹く過ごしやすい名古屋の街は、夜空に浮かぶ月を眺めるだけでも なんとなく「これって芸術だよね」と思えるほどロマンティックなものですが、 せっかくなのでもう少し踏み込んで芸術を堪能してみましょう。 秋の大きな芸術イベントとしては名古屋市民芸術祭が有名でしょう。 総合的な芸術の祭典として始まったこのお祭りは、平成2年度から毎年欠かさずに 継続して歴史を積み上げてきた、名古屋市が誇る美の祭典です。 継続は力なりという言葉もあるとおり、年々繰り返されることでより洗練されてきた 名古屋市民芸術祭は名古屋市民ならだれもが知っている、だれもがこの季節が やってくるのを楽しみにしている、許されるのなら自分も参加したいと考えるほどに 成熟してきた大イベントになりつつあります。 芸術の分野は伝統芸能・演劇・舞踊・音楽の4つで、参加者の中で優秀な者には 市民芸術祭賞が授与されるという、とっても嬉しいご褒美も用意されています。 伝統芸能といえば名古屋に限ったことではありませんが能(のう)が有名で、 これは元々特定の芸能をさすものではなく、お笑いなど滑稽芸でない芸能で物語性 があるもの全般を指す言葉でした。 名古屋市以外でもあらゆるジャンルの芸能を能と呼んでいた時代もありましたが、 1881年に能楽社の設立を機に能楽の能を指す語として定着しました。 これで少し能のランクが上がったようですがまだまだ快進撃は続き、現代では能楽 の中でも超自然的な物語を題材とした歌舞劇を能と呼ぶので、これが好きだと公言 すれば高尚な趣味を持っている人だと一目置かれます。 能楽と能を同じ意味で使っている場合はその限りではありませんが、完全なる「能」 ならば素晴らしい伝統芸術としての地位を持っているので、そのマニアと認められたら 芸術に詳しい人、秋だけでなく一年中芸術を楽しんでいる人に違いないと周囲の人達に 尊敬のまなざしでキラキラ見つめられるでしょう。 舞踊も同じく高尚な芸術で、大きく舞い・踊り・振りの三つにわけられます。 舞いとは歌や音楽に合わせて静かな摺り足のような動作で舞台の上を歩き回る、 いうなれば地味な踊りですがその技術は奥深くて貴族的であると賞賛され、日本の 伝統芸能としても長い歴史があります。 踊りはもう少し激しい動きになり、歌や音楽に合わせて拍子を取りつつ大きな動き を取り入れており、舞いに比べると庶民的な感じもします。 振りも同じように歌や音楽に合わせて動きますが、表現しているのは日常的な動き、 ゼスチャーのようなものです。 動きのひとつひとつが意味を持ち、何をしているのかを伝えているのが振りなので、 舞いや踊りよりも理解しやすいかもしれません。 このような芸術を競うのが名古屋市民芸術祭で、年々注目度も高まってしますし 名古屋の秋を満喫するのなら押さえておきたいイベントでしょう。